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2002/04
2002.4.23
ジプレキサ錠(オランザピン)による高血糖
概 要
ジプレキサ錠(オランザピン)発売後約10カ月間に因果関係が否定できない重篤な高血糖、糖尿病性ケトア
シドーシス、糖尿病性昏睡が9例(死亡例2例を含む)報告されたことから本剤投与中の血糖値上昇による糖尿
病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡について注意喚起のため緊急安全性情報が出され、添付文書の「警告」
「禁忌」「使用上の注意」が改訂されました。
糖尿病性ケトアシドーシスとは
インスリン量の不足によって糖代謝が行われなくなると、細胞内でブドウ糖のエネルギーが有効利用できな
いため 脂肪を分解して利用しようとします。その結果ケトン体という副産物(酸性物質)ができます。
この
ケトン体が体内に増えると、血液が酸性に傾きます。これを糖尿病性ケトアシドーシスといいます。
血液のpHは通常7.36〜7.44の弱アルカリ性です。 このpHを下回ると意識消失します。
重篤な高血糖を発現した国内症例のうち、詳細が判明している症例では1例が投与前に糖尿病であることが
分かっており、その他の症例のほとんどが高血糖や糖尿病の家族歴を有していました。
特徴的なのは糖尿病の既往があった1例以外のすべての症例が、肥満体の患者だったことです。
副作用発現までの日数は103日の1例を除いて2カ月以内で、体重増加、口渇、多飲、多尿、倦怠感などの初
期症状が見られました。オランザピンによる高血糖の機序は以下のような仮説が考えられています。
オランザピンによる高血糖の機序(仮説) → インスリン感受性低下?グルコース代謝異常?インス
リン放出抑制? → 高血糖
★チェックすべき患者の既往等★
・糖尿病
・糖尿病家族歴
・高血糖
・肥満
★チェックすべき患者の症状等★
・口渇
・多飲
・多尿・頻尿
・体重増加
・しびれ
・視覚障害
・血糖値
・果物のような口臭(アセトン臭:ケトアシドーシスの症状)
★処 置★
・投与を中止し、直ちに受診するよう伝える
<参考>症状に対する処置には以下のような指示が考えられます
・インスリン投与
・インスリン投与、生理食塩水輸液、カリウム補給(ケトアシドーシスの場合)
詳 細 情 報
機序は判明していない
国内・海外の症例をみると(副作用症例報告一覧を参照)、ほとんどの症例に体重増加がみられます。オラ
ンザピンによる高血糖は、肥満によるインスリン感受性の低下が原因と考えられてきました。しかし、まれに
体重の増えない症例があることから、他に原因があるのではないかと推測されています。
グルコースの代謝異常、オランザピンまたはその代謝物によるインスリン放出抑制などさまざまな仮説があ
りますが、明確な関連性が判明したわけではありません。
投与中止が最優先
高血糖に対する処置としてSU剤などの糖尿病薬、インスリンが投与されていますが、糖尿病薬では効果が
見られない場合が多く、インスリン投与の方が有効と考えられます。
しかし、高血糖が出現した場合は、オランザピンの投与を中止することが最も有効です。
中止後も血糖値に注意が必要
オランザピンを中止すると2週間以内で改善している症例が多く、インスリン治療が続いていたために低血
糖を起こした症例もあります。
従ってオランザピン中止後に高血糖に対する薬物治療が続いている場合には、血糖値の管理が必要であり、
低血糖に注意しなければなりません。
副作用症例報告一覧
オランザピンの添付文書改訂(警告新設、禁忌・使用上の注意追記)
【警告】新設
1.著しい血糖値の上昇から、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡等の重大な副作用が発現し、死亡に
至る場合があるので、本剤投与中は、血糖値の測定等の観察を十分に行うこと。
2.投与にあたっては、あらかじめ上記副作用が発現する場合があることを、患者及びその家族に十分に説明
し、口渇、多飲、多尿、頻尿等の異常に注意し、このような症状があらわれた場合には、直ちに投与を中断
し、医師の診察を受けるよう、指導すること[「重要な基本的注意」の項参照]
【禁忌】追記
5.糖尿病の患者、糖尿病の既往歴のある患者
【慎重投与】追記
(6)糖尿病の家族歴、高血糖あるいは肥満等の糖尿病の危険因子を有する患者[「重要な基本的注意」の項参
照]
【重要な基本的注意】追記
(1)本剤の投与により著しい血糖値の上昇から、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡等の致命的な経過
をたどることがあるので、本剤投与中は、血糖値の測定や口渇、多飲、多尿、頻尿糖の観察を十分に行うこ
と。特に、高血糖、肥満等の糖尿病の危険因子を有する患者では、血糖値が上昇し、代謝状態を急激に悪化さ
せるおそれがある。
(2)本剤の投与に際し、あらかじめ上記副作用が発現する場合があることを、患者及びその家族に十分に説明
し、口渇、多飲、多尿、頻尿等の異常に注意し、このような症状があらわれた場合には、直ちに投与を中断
し、医師の診察を受けるよう、指導すること。
(3)本剤の投与により体重増加を来たすことがあるので、肥満に注意し、肥満の兆候があらわれた場合は、
食事療法、運動療法等の適切な処置を行うこと。
【副作用】追記
(1)重大な副作用
1)高血糖、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡:高血糖があらわれ、糖尿病性ケトアシドーシス、糖
尿病性昏睡から死亡に至るなどの致命的な経過をたどることがあるので、血糖値の測定や、口渇、多飲、多
尿、頻尿等の観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止し、インスリン製剤の投与を行うな
ど、適切な処置を行うこと。
2001/10
2001/10/18
炭疽菌、バイオテロの情報
今、アメリカは、バイオテロと思われる炭疽菌事件の恐怖に揺れています。日本でも悪質ないたずらと思われる事件が報道され、多くの
国民が不安を感じています。テロの目的は不安を煽り、皆さんを恐怖に駆り立てることですが、情報不足がそれを助長します。
適切且つ的確な情報は不安と恐怖を緩和します。そこで、日本医師会と厚生労働省のホームページに詳しい情報がありますので、
内容をご紹介します
(1)日本医師会(http://www.med.or.jp/)
米国における同時多発テロ事件に関連して
http://www.med.or.jp/etc/terro.html
バイオテロリズムの脅威−生物兵器(炭疽菌)によるテロリズム−
http://www.med.or.jp/etc/bio.html
Q1: バイオテロリズム(生物兵器テロ)とは何か?
Q2: 生物兵器とは何か?
Q3: 生物兵器の歴史は?
Q4: 生物兵器に使用される微生物は何か?
Q5: 炭疽菌(Bacillis anthracis)とは?
Q5-1: 炭疽菌(Bacillis anthracis)の疫学
Q5-2: 炭疽菌(Bacillis anthracis)の微生物学
Q5-3: トキシンの特徴は?
Q5-4: 検査による診断方法は?
Q5-5: 臨床症状は?
Q6: 治療は?
Q7: ワクチンはあるか?
Q8: 疑わしい場合は、どこに連絡するか?
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(2)厚生労働省(http://www.mhlw.go.jp/)
生物兵器テロの可能性が高い感染症について(平成13年10月15日)
http://www.mhlw.go.jp/houdou/0110/h1015-4.html
生物兵器テロとして用いられる可能性が高い、4種類の病原体・毒素による疾病の概要、治療等に関するまとめ
国内における生物テロ事件発生を想定した対応について
http://www.mhlw.go.jp/houdou/0110/h1011-6.html
CDCによる健康に関する勧告
炭疽菌等の汚染のおそれのある封筒等の取扱い方法
http://www.mhlw.go.jp/houdou/0110/h1015-1.html
特定危険部位を含むおそれのある牛由来原材料を使用して製造又は
加工された食品の安全性確保に係る自主点検の結果について
http://www.mhlw.go.jp/houdou/0110/h1018-2.html
2001/9
狂牛病とは?
牛を原料とする医薬品の安全性
狂牛病は牛海綿状脳症(Boviner spongiform en-cephalopathy:BSE)という病名が示すとおり、牛の脳がスポンジ状に穴があいたような状態となり運動神経の麻痺などから異常行動を起こして死亡する病気で、1986年に英国で初めて報告されています。
牛由来の医薬品の安全性問題については、現在厚生省で実体調査が行われており、調査結果の素早い公表が待たれているところです。
狂牛病と同様の症状を呈するものに羊のスクレイピー、人ではクールー病やクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、ゲルストマン・ストロイスラー症候群(GSS)などがあります。これらは感染から発症までの期間が1年以上場合によっては10年くらいと長いことから従来はスローウイルス感染症と呼ばれてきました。しかし研究が進むにつれて、発症の原因となっているのがウイルスではなくDNAもRNAも持たない感染性蛋白質「プリオン」(PrP)であるとの見方が有力になってきています。
プリオン蛋白質は元々人や牛などの体内に存在しているもので、正常なものはそれ自体は病原性も持っていません。しかし一旦異常型のプリオンが体内に入り込むと正常型のものを次々と異常型に変えていくと考えられています。
プリオン蛋白質は塩素や、ホルマリン、煮沸、紫外線、弱酸などによる消毒には強い抵抗性を示し、高圧蒸気滅菌で、次亜塩素酸Naなどでも完全に不活化できないとの報告もあります。
動物種の差から牛や羊から人への感染は起こらないというのがこれまでの実験から得られた見解となっていました。
ところが今年の3月に、英政府が”ヤコブ病(CJD)でなくなった患者の中に狂牛病の牛から感染した可能性が否定できない”との発表を行ったことから大騒ぎとなりました。
今のところ、英国と欧米の専門家の間でも狂牛病とヤコブ病(CJD)に因果関係があるのかどうか意見が分かれているところで、はっきりとしたことが明らかになるまでにはなお数年を要するものと思われます。
牛由来の医薬品については、以前CJDにおいてヒト成長ホルモン製剤を介して感染した例もあり、厚生省で調査中です。
狂牛病の99%以上は英国で発生しており、また規制の強化などから狂牛病の発症数は確実に減少してきています。これまで、感染牛の筋肉や牛乳などからは感染性は見い出されていません。
英国がこれまでに行ってきた処置やCJD発症率が100万人に1人であることを考えるとあまり狂牛病に神経質になる必要はないようです。
{参考文献}大阪府薬雑誌 1996.5
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ヤコブ病
クロイツフェルト・ヤコブ病
CJD:creytzfeld-Jakob Disease
伝達性海面状脳症
TES:transmissible Spongiform Encephalopathy
TESは、プリオン病とも呼ばれ動物プリオン病とヒトプリオン病に大別されます。
動物プリオン病
スクレイピー(ヒツジ):すべてのプリオン病の起源と考えられています。
BES(ウシ;狂牛病):ヒツジの飼料から発生
Bovine spongiform encephalopathy
その他:ミンク、ネコなど
ヒトプリオン病
クールー:パプアニューギニアの人食い習慣より発生
CJD(古典型):クロイツフェルト・ヤコブ病
新変異型CJD:1996年に英国で初報告、発症年齢が若い、臨床的にPSDが無いことから古典型と区別
* PSD:Periodic Synchronous Discharge 周期性同期生異常波
<<クロイツフェルト・ヤコブ病の特徴>>
* 主に中年以降発症し、進行性痴呆、ミオクローヌス、PSDを呈する予後不良の脳疾患
* 新変異型CJDは、発症年齢は16歳から39歳と若く、脳の病理組織検査では古典型と異なる上、
クールー斑に似たアミロイド斑が見られます。
* 新変異型CJDはBSEと同一の病原体と考えられていますが、感染経路は明確になっていません。
<<牛を原料とする医薬品>>
アプロチニン製剤(トラジール注)、インスリン製剤、含 糖ペプシン、牛血液抽出物(ソルコセリル注)、微線維コ ラーゲン塩酸塩、チトクロー ムC(チトレスト)、トリプシン、トロンビン、肺サーファクタント、バソプレシン(ピトレシン注)、ヒアルロニダーゼ(ヒアレイン点眼)、メイパック、ゼラチン
フィブリノゲン加第[因子(ベリプラスト、ボルヒール、ティシール)等の使用により、ヒトにTSEを伝播するとの疫学的データはなく、また、本剤に含まれる牛由来アプロチニンは、製造工程でTSE原因物質の除去処理を行っている。しかし、TSE伝播についての理論的な危険性を完全に否定することはできず、また、TSE原因物質がマウス脳内に直接投与されたとき感染が認められたとの報告があるので、頭蓋腔内、脊髄腔内、眼球内への使用では、治療上の有益性を勘案した上で本剤を使用すること。
口蹄疫
出典:治療 2001.6
口蹄疫は牛、水牛、めん羊、山羊などの家畜をはじめ、野生動物を含むほとんどの偶蹄類動物が感染する急性のウイルス性伝染病です。
本症は極めて伝染力が強く、家畜への直接被害に加えて家畜・畜産物の国際流通にも大きな影響を及ぼすことから国際的に最重要家畜伝染病と位置づけられています。
口蹄疫は口蹄疫ウイルスによって起こる病気で、発病動物は口、舌、蹄部および乳房周辺の皮膚や粘膜に水疱を形成し、これが病名の由来ともなっています。
口蹄疫による致死率は幼獣では50%を越えることもありますが、成獣では数%程度にすぎません。しかし、発病に伴う発育障害、運動障害あるいは泌乳障害などによって産業動物としての価値が著しく低下し、経済的被害は甚大となります。
口蹄疫ウイルスは通常の社会生活を行っている限りヒトには感染しません。1970年代までに口蹄疫がヒトに感染したという報告がいくつかありますが、これらはウイルス学的な証明が不十分であり、おそらくコクサッキーウイルスやエンテロウイルスなどのヒトのウイルス感染症との混同と考えられます。
口蹄疫ウイルスに対する動物の感受性は予想される曝露ウイルス量と動物種ごとの最少有効感染量によって限定され、ヒトはきわめて感受性が低いとされています。しかし、ウイルスの誤注射あるいは初るを大量に含む発病牛の生乳を飲んだ場合はまれにヒトに感染することも事実です。
2000/11
2000/11/17
インフルエンザ脳炎・脳症患者に対するジクロフェナクナトリウム製剤(ボルタレンサポ、ボルタレン錠)の使用について
脳炎脳症による死亡率一部解熱剤使用で上昇
(参考文献:平成12年1月8日号 日本医事新報News)
インフルエンザ脳炎・脳症による死亡率が一部の解熱剤を使用したことで高くなることを示す厚生省研究班の調査結果が十二月二十日、
中央薬事審議会医薬品等安全対策特別部会に報告された。ただ、同部会では、この結果から「解熱剤と脳炎・脳症による死亡との関連に
ついて結論的なことは言えない」と判断。厚生省も医療機関への周知徹底などの対応は差し控える方針を決めた。
調査を実施したのは「インフルエンザ脳炎・脳症の臨床疫学的研究班」(班長=森島恒雄名大保健学教授)。平成十一年一〜三月にイン
フルエンザの臨床経過中に脳炎・脳症を発症した一八一例(うち小児一七○例)を対象に解熱剤使用と死亡率との関連性を調べた。
その結果、メフェナム酸やジクロフェナクナトリウムを使用した症例の死亡率が、解熱剤を使用しなかった症例の死亡率に比べ高いこと
が判明(表=省略)。研究班ではさらに、発熱時の年齢、最高体温、発熱から神経症状発現までの日数を加味した解析を行ったが、それ
でも、解熱剤を使用しない場合に比べ、メフェナム酸を使用した場合は四・六倍、ジクロフェナクナトリウムを使用した場合は三・○五倍、
死亡率が高くなるという結果が出た。
ただ、研究斑では、脳炎・脳症は四二度以上の発熱でほば全例死亡すると言われ、メフェナム酸やジクロフェナクナトリウムはこうした重
症例の解熱に使われる傾向にある、症例数が解析には満足すべき数に達していない薬剤がある−などを理由に、さらなる調査の必要性を強調
している。
また、報告を受けた部会の議論でも、インフルエンザ流行期を前に医療現場で混乱が起こることを懸念する声が上がった。
この調査について厚生省では、解熱剤を投与した時点が不明確などの問題点もあるとしている。
2000/11/08
塩酸フェニルプロパノールアミン(PPA)
鼻炎用の薬などに配合される「塩酸フェニルプロパノールアミン(PPA)」がアメリカで販売中止になるという報道がありました。
18歳〜49歳の女性の脳出血患者約700人を調査したところ、3.8%の人がPPAを服用していたということです。もちろん、3.8%
という数字は脳出血を起こした人をベースにしての割合ですから、この薬を飲んだからといって、このような高い率で脳出血を起こすわけでは
ありません。全体での発生率は非常に低いと考えられています。アメリカでは、同年齢層の健康な女性でも2.4%もの人がダイエットなどの
目的で服用しているそうですから、その点も含めて考える必要があります。カゼや鼻炎の治療目的で飲んでいた場合は、それほどの差はでてい
ないそうです。 PPAは、鼻粘膜の血管を収縮させることで鼻水や鼻詰まりに優れた効果を発揮します。理想的には鼻粘膜だけに作用すれば
よいのですが、飲み薬の場合そうもいきません。全身の血管も多少なりとも収縮させてしまうので、人によっては血圧が上がってしまうことが
ありますし、交感神経の刺激作用で心臓がドキドキすることもあります。血圧の高い人、心臓の悪い人、糖尿病の人などでは、もともと要注意
の薬なのです。持病のある人は、使用する前に医師や薬剤師に相談するようにしましょう
2000/04
2000/04/04
アセトアミノフェンに対する誤解
はじめに
埼玉県で起きた保険金詐欺事件で、大量のアセトアミノフェンを含有するOTC風邪薬が使用された疑いが強いとのマスコミ報道がありました。その報道を見られて、一般の方から、そのような危険な薬を飲んで大丈夫だろうかという心配のメールを受けました。今回は、アセトアミノフェンに関する世間の誤解を解こうと思います。
アセトアミノフェンとは?
アセトアミノフェンという成分は、一般的な風邪薬の中に鎮痛解熱薬として入っています。現在200種以上の製剤が販売されていると言われています。また、医療用医薬品(医師の処方箋が必要なもの)としても処方されており、私も調剤し、患者さんにお渡ししています。痛いとき、熱があるときに使う薬で、それを飲んだからといって風邪そのものを元から治す薬ではありません。一時しのぎの薬です。風邪薬や痛み止めとして、普通の量を普通に使う分には比較的安全な薬であり、効き目が優れていると言えます。解熱鎮痛剤一般に言えることですが、胃を荒らすことがありますので、空腹の時飲むのは避けた方がいいでしょう。
大量に飲むと
大量に服用すると肝臓・腎臓・心筋に重い障害を起こすことがあります。特に肝臓の障害は、劇症肝炎(劇症肝炎については、「最近分かった劇症肝炎を起こす薬」の項に書いています)に進行することもあると言われています。体重60kgの人で約9gが中毒量、約12〜60gが致死量とされています(なお風邪薬などの1回分の含有量は数百mgです)。ボケたお年寄りが食べるものと間違えて大量に誤飲してしまい、病院にかつぎ込まれるケースがあります。
アセトアミノフェンは体内で、N-アセチル-P-キノネミンというものに変化をし、それが毒性をあらわすとされています。大量に服用することによる肝障害は、早期に解毒剤(N-アセチルシステイン)を投与し治療すると軽減できると言われています。
アルコールと一緒に飲むと
アルコール常用者では比較的少ない量で肝臓障害を起こすことがあります。アルコールによって体内で、N-アセチル-P-キノネミンが大量にできるためです。アルコールと一緒に飲むのは避けなければなりません。
市販薬として売られていて大丈夫?
日本薬剤師会は、市販の風邪薬が殺人事件に使用された疑いが強いとのマスコミ報道を受け、関係者に風邪薬等の販売体制を再度徹底するよう通知しました。同種同効薬を大量に購入したり、頻繁に購入するなどの不審な点がある場合は消費者に購入理由を尋ねるなどの確認を行い、医薬品の不適正な使用が疑われる場合は販売しないこととしました。
再三言いますが、アセトアミノフェンは普通の量を普通に飲む分には、心配することはない薬です。ただ大量に飲んだり、アルコールと一緒に飲むことは非常に危険です。
2000/02
2000/02/24
ベンズブロマロン(ユリノーム、ナーカリシン等)による劇症肝炎についての緊急安全性情報が関係者に通知されました。ベンズブロマロンは、尿酸を排泄する作用をもつお薬で、痛風や高尿酸血症の治療剤として病院でよく使用されています。推定使用患者数が約30万人で、今回報告された死亡例は6例ですから、非常にまれな例ということはいえます。
劇症肝炎は、その名がしめすように、症状が非常に激しく、しかも急速に進行する肝炎で、およそ7〜8割りの人が死に至るといわれる恐ろしい病気です。体の免疫系が過剰に反応し、肝細胞を激しく攻撃、肝臓が破壊されしまうのですが、詳しい原因はわかっていません。その多くは、ウィルス性の肝炎によるものですが、薬剤が原因となることもあります。最近の緊急安全性情報においても、前立腺癌治療剤フルタミド(オダイン錠)(98/08/07)、糖尿病治療薬トログリタゾン(ノスカール)(97/12/01)など、劇症肝炎に対する注意喚起をおこなったものです。
初期症状として、まず、体のだるさ、食欲不振、吐き気、発熱などが急激にあらわれてきます。続いて黄疸により白目や皮膚が黄色くなり、症状の悪化が続きます。さらに肝臓の破壊がすすむと、肝性脳症から意識障害を生じ重症化してしまいます。万が一のことですが、痛風のお薬をお飲みの人は、念のため医師や薬剤師から注意点などを確認しておくとよいでしょう。
ベンズブロマロンによる劇症肝炎について(緊急安全性情報)(厚生省 2/23)